ザ・ジャムは英国で特別な人気のある3人組バンドで、ギター&ボーカルのポール・ウェラー(1958年サリー州ウォキング生まれ)がほとんどの曲を書いた。パンクの流れで注目を浴びたバンドであるが、スーツ姿であることが多く、強盗に殴り倒される内容の歌詞やアコースティックなバラード曲など、60年代のビート・グループのあり方に比せられることが多い。英チャートではシングルが4曲1位となり、パンク系ながら商業的にはメインストリームの存在で、成功の絶頂にあった1982年に解散が発表された際はひどく惜しまれ、最後のシングルBeat Surrenderも1位に。
1977~82年というジャムの軌跡は、そのままパンクがNWと装いを変えて拡散し、商業的にはブリティッシュインヴェイジョンの再来へと至る5年間であり、純パンクともNWとも異なるジャムはアメリカや日本では地味な存在にとどまっていた。ポリドールというのが良くなかったのかな。私は82年の初めに中古のシングルを2枚買ったのが出会いで、お気に入りのスクイーズが彼らと同時期に対照的にひっそり解散した方が印象的だったくらいだ。
当時は輸入レコード店が新たに出来たり、そこでアマチュアが作るミニコミ誌が売られて未知の音楽と出会ったり、洋楽を聞くだけといっても英インディーズやNWの活況を肌で感じられたものだ。ジャムは解散に伴って英国で全シングルを再発し、これを解説するミニコミ誌によって、初めてその魅力に浸り、あらためて解散を惜しんだ私であったが、そうするうちウェラーはザ・スタイル・カウンシルなる奇妙な名の2人組で活動することになった。
彼はジャム時代からR&Bへの傾倒を広言しており、ファンクやアコースティックな音作りを取り入れていたが、スタイル・カウンシルではさらに多くの要素を取り入れ、それこそ当時の輸入盤店のような流行を意識したオシャレな作風へ転換。しかしSpeak Like a ChildはジャムBitterestPillの、Walls Come Tumblin' Downは同Beat Surrenderの焼き直しとしか思えず、ウェラーの作曲能力、またボーカルにもやや疑問符を付けざるをえなかった。歌詞だけ政治的なのが空しい。
次々とユニークな才能が現れるなか、スタイル・カウンシルはフェイド・アウトしてゆくこととなったが、90年代オアシスやパルプといったブリットポップが賑わうと、まさしく英国のオーセンティックな存在としてウェラーのソロ活動に光が当てられるようになる。曲想もそうした時代色と、一貫しているR&Bの影響から織り成される滋味が、年齢相応の渋い輝きを放つようだ—![]()
iTunes Playlist "119) The Jam / Paul Weller" 119 minutes
![]()
1) The Jam / In the City (1977 - Snap!)
2) The Jam / All Around the World (1977 - Snap!)
![]()
3) The Jam / Down in the Tube Station at Midnight (1978 - All Mod Cons)
4) The Jam / English Rose (1978 - All Mod Cons)
5) The Jam / 'A' Bomb in Wardour Street (1978 - All Mod Cons)
6) The Jam / Strange Town (1979 - Snap!)
7) The Jam / The Butterfly Collector (1979 - Snap!)
8) The Jam / When You're Young (1979 - Snap!)
3作目のALL MOD CONSからジャムの快進撃が始まった。地下鉄駅で殴り倒される主人公はテイクアウトのカレーを持っていて妻が待っている。キンクスのカバーDavid Wattsと共に、パンクではないがとてもユニークな存在であったことを物語る。また「英国ならではの」古今の曲をいくつか選ぶとすればEnglish Roseは必ず候補に入るだろう
![]()
9) The Jam / The Eton Rifles (1979 - Setting Sons)
10) The Jam / Going Underground (1980 - Snap!)
11) The Jam / Dreams of Children (1980 - Snap!)
Going Undergroundの青春を感じさせる疾走感は、名曲があまたあるこの時期の英国でも随一
![]()
12) The Jam / Start! (1980 - Sound Affects)
13) The Jam / That's Entertainment (1980 - Sound Affects)
14) The Jam / Man in the Corner Shop (1980 - Sound Affects)
![]()
15) The Jam / Town Called Malice (1982 - The Gift)
16) The Jam / Carnation (1982 - The Gift)
17) The Jam / The Bitterest Pill (I Ever Had to Swallow) (1982 - Snap!)
18) The Jam / Beat Surrender (1982 - Snap!)
THE GIFTは前作以上に多彩で、ブルース・フォクストン作のインスト曲も収め、当時は非常に充実していると思い解散することが信じられなかったが、いま聞くとやや迷いが感じられ散漫さも
![]()
19) The Style Council / Speak Like a Child (1983 - The Singular Adventures of the Style Council)
20) The Style Council / Long Hot Summer (12 Inch Version) (1983 - The Singular Adventures of the Style Council)
21) The Style Council / My Ever Changing Moods (12 Inch Version) (1984 - The Singular Adventures of the Style Council)
![]()
22) The Style Council / Blue Café (1984 - Café Bleu)
23) The Style Council / The Paris Match (1984 - Café Bleu)
24) The Style Council / Shout to the Top! (1984 - The Singular Adventures of the Style Council)
おしゃれ、でも…。CAFÉ BLEUはいまも胸騒ぎを起こさせる。ボーカルの弱さを自覚したわけではないだろうがParis Matchではトレイシー・ソーンが歌う。制約のあるなかで突っ走ったジャム時代を超えられないのは寂しい
![]()
25) The Style Council / Come to Milton Keynes (1984 - Our Favourite Shop)
26) The Style Council / Promised Land (1989 - The Singular Adventures of the Style Council)
![]()
27) Paul Weller / Sunflower (1993 - Wild Wood)
WILD WOODは評価の高いソロ2作目。タイトル曲も切なくてよいですね。トラフィックの影響が濃いとされるが、膨大に在庫するいまはじゃあトラフィックを聞くわいとなってしまう![]()
![]()
28) Paul Weller / You Do Something to Me (1995 - Stanley Road)
![]()
29) Paul Weller / Mermaids (1997 - Heavy Soul)
![]()
30) Paul Weller / It's Written in the Stars (2002 - Illumination)
![]()
31) Paul Weller / If I Could Only Be Sure (2004 - Studio 150)
![]()
32) Paul Weller / Kling I Klang (2012 - Sonik Kicks)
![]()
33) Paul Weller / The Soul Searchers (2018 - True Meanings)
1977~82年というジャムの軌跡は、そのままパンクがNWと装いを変えて拡散し、商業的にはブリティッシュインヴェイジョンの再来へと至る5年間であり、純パンクともNWとも異なるジャムはアメリカや日本では地味な存在にとどまっていた。ポリドールというのが良くなかったのかな。私は82年の初めに中古のシングルを2枚買ったのが出会いで、お気に入りのスクイーズが彼らと同時期に対照的にひっそり解散した方が印象的だったくらいだ。
当時は輸入レコード店が新たに出来たり、そこでアマチュアが作るミニコミ誌が売られて未知の音楽と出会ったり、洋楽を聞くだけといっても英インディーズやNWの活況を肌で感じられたものだ。ジャムは解散に伴って英国で全シングルを再発し、これを解説するミニコミ誌によって、初めてその魅力に浸り、あらためて解散を惜しんだ私であったが、そうするうちウェラーはザ・スタイル・カウンシルなる奇妙な名の2人組で活動することになった。
彼はジャム時代からR&Bへの傾倒を広言しており、ファンクやアコースティックな音作りを取り入れていたが、スタイル・カウンシルではさらに多くの要素を取り入れ、それこそ当時の輸入盤店のような流行を意識したオシャレな作風へ転換。しかしSpeak Like a ChildはジャムBitterestPillの、Walls Come Tumblin' Downは同Beat Surrenderの焼き直しとしか思えず、ウェラーの作曲能力、またボーカルにもやや疑問符を付けざるをえなかった。歌詞だけ政治的なのが空しい。
次々とユニークな才能が現れるなか、スタイル・カウンシルはフェイド・アウトしてゆくこととなったが、90年代オアシスやパルプといったブリットポップが賑わうと、まさしく英国のオーセンティックな存在としてウェラーのソロ活動に光が当てられるようになる。曲想もそうした時代色と、一貫しているR&Bの影響から織り成される滋味が、年齢相応の渋い輝きを放つようだ—

iTunes Playlist "119) The Jam / Paul Weller" 119 minutes

1) The Jam / In the City (1977 - Snap!)
2) The Jam / All Around the World (1977 - Snap!)

3) The Jam / Down in the Tube Station at Midnight (1978 - All Mod Cons)
4) The Jam / English Rose (1978 - All Mod Cons)
5) The Jam / 'A' Bomb in Wardour Street (1978 - All Mod Cons)
6) The Jam / Strange Town (1979 - Snap!)
7) The Jam / The Butterfly Collector (1979 - Snap!)
8) The Jam / When You're Young (1979 - Snap!)
3作目のALL MOD CONSからジャムの快進撃が始まった。地下鉄駅で殴り倒される主人公はテイクアウトのカレーを持っていて妻が待っている。キンクスのカバーDavid Wattsと共に、パンクではないがとてもユニークな存在であったことを物語る。また「英国ならではの」古今の曲をいくつか選ぶとすればEnglish Roseは必ず候補に入るだろう

9) The Jam / The Eton Rifles (1979 - Setting Sons)
10) The Jam / Going Underground (1980 - Snap!)
11) The Jam / Dreams of Children (1980 - Snap!)
Going Undergroundの青春を感じさせる疾走感は、名曲があまたあるこの時期の英国でも随一

12) The Jam / Start! (1980 - Sound Affects)
13) The Jam / That's Entertainment (1980 - Sound Affects)
14) The Jam / Man in the Corner Shop (1980 - Sound Affects)

15) The Jam / Town Called Malice (1982 - The Gift)
16) The Jam / Carnation (1982 - The Gift)
17) The Jam / The Bitterest Pill (I Ever Had to Swallow) (1982 - Snap!)
18) The Jam / Beat Surrender (1982 - Snap!)
THE GIFTは前作以上に多彩で、ブルース・フォクストン作のインスト曲も収め、当時は非常に充実していると思い解散することが信じられなかったが、いま聞くとやや迷いが感じられ散漫さも

19) The Style Council / Speak Like a Child (1983 - The Singular Adventures of the Style Council)
20) The Style Council / Long Hot Summer (12 Inch Version) (1983 - The Singular Adventures of the Style Council)
21) The Style Council / My Ever Changing Moods (12 Inch Version) (1984 - The Singular Adventures of the Style Council)

22) The Style Council / Blue Café (1984 - Café Bleu)
23) The Style Council / The Paris Match (1984 - Café Bleu)
24) The Style Council / Shout to the Top! (1984 - The Singular Adventures of the Style Council)
おしゃれ、でも…。CAFÉ BLEUはいまも胸騒ぎを起こさせる。ボーカルの弱さを自覚したわけではないだろうがParis Matchではトレイシー・ソーンが歌う。制約のあるなかで突っ走ったジャム時代を超えられないのは寂しい

25) The Style Council / Come to Milton Keynes (1984 - Our Favourite Shop)
26) The Style Council / Promised Land (1989 - The Singular Adventures of the Style Council)

27) Paul Weller / Sunflower (1993 - Wild Wood)
WILD WOODは評価の高いソロ2作目。タイトル曲も切なくてよいですね。トラフィックの影響が濃いとされるが、膨大に在庫するいまはじゃあトラフィックを聞くわいとなってしまう


28) Paul Weller / You Do Something to Me (1995 - Stanley Road)

29) Paul Weller / Mermaids (1997 - Heavy Soul)

30) Paul Weller / It's Written in the Stars (2002 - Illumination)

31) Paul Weller / If I Could Only Be Sure (2004 - Studio 150)

32) Paul Weller / Kling I Klang (2012 - Sonik Kicks)

33) Paul Weller / The Soul Searchers (2018 - True Meanings)